スポーツ選手のための栄養プログラム(3) プログラム実施の柱
連載:ビタミンつれづれ
選手の食事内容の調査の結果、ビタミン、ミネラルのうち、摂取量が一般人を対象とした所要量にも満たないものがあることが明らかになりました。 日本ではまだスポーツ選手向けの栄養摂取量の基準というものがありません。アメリカを中心としてビタミンの大量投与による様々な成果が報告されている中、食事の内容に気を配ることはもちろん、ビタミン、ミネラルのサプリメントの摂取にも積極的に取り組む姿勢が望まれます。 ビタミン、ミネラルはそれ自体エネルギーになるものではないため、食事の代わりにはなりませんが、「体がだるく疲れが残る」「風邪をひきやすく治りにくい」「集中力が持続しない」「筋肉が硬く、よくけいれんしたりつったりする」「関節に痛みがある」「血糖値コントロールがうまくいかない」といったスポーツ選手に良く見られる症状の改善には非常に効果があります。 さらに今回行った血液検査の結果、女性と高校生のスポーツ選手に明らかな鉄の欠乏が見られました。鉄不足イコール貧血ということではないにしろ、こうした状態は速やかに改善すべきです。鉄欠乏性貧血が明らかな場合、ヘモグロビンが減少し、赤血球が小さくなるため酸素運搬能力が低下し、その結果運動能力が低下します。 ![]() 夏期は特に発汗によりミネラルの排出が増加し、暑さによる食欲不振で摂取するミネラルが減少するため、鉄を始めとしてミネラル不足に陥りがちです。 また、女性は生理によって、成長期にある人はその成長のために鉄の所要量が増加するため、鉄欠乏状態に陥りやすいのです。 鉄は非常に吸収されにくいミネラルですが、動物性の食品に含まれているものは吸収されやすく、ビタミンCやたんぱく質がその吸収を促進します。そのため食事の内容を改善するとともにサプリメントの形で摂取することが必要です。 スポーツ選手はけがや疲労感をおしてでも激しいトレーニング、試合に臨むことが当然であるかのごとくされてきた中、マルチビタミン、ミネラルのサプリメントの投与と食事内容、食習慣の管理によって、選手の体感は明らかに異なってきます。これを単に気のせいだなどといってその効果に目をつぶってしまうのは、あまりにも消極的な態度といわざるを得ません。 |
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プログラム実施の柱1.選手には休養が必要 2.エネルギー源を確保する エネルギー源となる栄養素は、糖質、脂肪、たんぱく質です。そのうち特に運動のエネルギー源となるのは糖質と脂肪です。たんぱく質を運動エネルギーとして使う状態はそのエネルギー生成工程が複雑なために効率が悪く、内臓に負担をかけます。 3.良質のたんぱく質をとる 体をつくる場合には、そのもととなるたんぱく質やミネラルを確実に補給することが必要です。成長期にあるスポーツ選手は、特にその量、質ともに管理が必要です。大人の場合は、特に質の向上に重点を置く必要があります。たんぱく質が筋肉づくりのもととなるという考え方が浸透するとともに、補助食品としてプロテインを摂取する人が多いようですが、とった分だけすべてが筋肉になるのではなく、とりすぎると肝臓に負担をかけたり、トレーニングとうまく組み合わせないと脂肪として蓄積されてしまいます。 4.ビタミン、ミネラルをとる スポーツ選手のエネルギー代謝は一般人のそれと比較して非常に大きく、特に瞬発力を必要とする競技では、その最大の力を発揮している時にエネルギー代謝に関わるビタミン、ミネラルがどれほど消費されているかを知ることはできません。 |
連載: ビタミンつれづれ
- 1. きちんとした食事 現代人の食事はこうあるべき
- 2. 食事だけじゃないビタミン・ミネラル補給 食事とサプリメントの基本
- 3. 所要量を満たすだけではダメ おちいりがちな所要量の罠
- 4. スポーツ選手のための栄養プログラム(1) 概要
- 5. スポーツ選手のための栄養プログラム(2) スポーツ選手の食事の傾向
- 6. スポーツ選手のための栄養プログラム(3) プログラム実施の柱
- 7. スポーツ選手のための栄養プログラム(4) プログラムの実例
- 8. スポーツ選手のための栄養プログラム(5) スポーツ選手の栄養管理
- 9. スポーツ選手のための栄養プログラム(6) たんぱく質、脂質、糖質の役割
- 10. スポーツ選手のための栄養プログラム(7) ビタミン・ミネラルの役割
- 11. スポーツ選手のための栄養プログラム(8) 食事摂取のポイント
- 12. スポーツ選手のための栄養プログラム(9) 結びとして