歴史を振り返ってみることの大切さ (1) 社会保障制度が変わりつつある

連載:社会保障のそもそもの成り立ち

医事評論家 菊地一久
2002/10/17

この6月初め、財務省が03年度予算編成に臨む基本方針となる財務制度等審議会(財務相の諮問機関、今井敬会長)の「03年度予算編成の基本的な考え方」の素案を明らかにした。


この素案の大きなテーマは「財務の極度の悪化によって財政自体が今や将来不安の一因となった」ということである。

そのため、減税案に対して「財務赤字を拡大させる以外の何ものでのない」と全面的に否定し、04年度の年金改革では「給付水準を抑制」し、出産率などが変わっても保険料水準が頻繁に変わらない制度にすることを求めた。そして公的年金や生活保護の給付額を物価に応じて増減させる。年金については「物価スライド制」の凍結を解除し、制度通り引き下げる方針を明示した。
このほか、社会保険をはじめ国が行っている社会保障費の給付削減や負担増を、財政対策として取る方向を打ち出したのである。そして、このためには、一層の行政改革に取り組まねばと、その強い姿勢を、この素案は強調している。


このことを新聞、テレビのニュースで知って、やはり国益第一であり、国があってこそ私たち国民が存在し得るのだという寂しい印象を持った。
人間として生きていくための社会保険制度や社会保障制度が、国の財政に左右され、本来の人生の質を低下せざるを得ないのか。それはいたしかたのないことなのか。
日本が、明治以来、歩んできた近代社会を、歴史的に振り返ってみて、断片的ではあるが、考えてみた。

■ 欧米に対抗する明治政府

明治維新を経て、明治政府が確立された。一にも二にも、欧米の強国に対抗して遅れた産業革命による数々の技術改革の推進を進めることで、欧米の先進国に追いつくための日本型資本主義社会の確立を急テンポで実施した。そのことは、やむを得ないことだという人も多いが、大多数の国民は、お国のためと、自らの人生を犠牲にしたといえる。


明治政府が欧米先進国に追いつくことは、至難のわざである。欧米先進国は、この時すでに産業革命を終え、独占資本主義社会段階に発展していたのである。
明治政府は、とにかく経済力をつけねばと欧米先進国の仲間入りを、かなり無理をして実現させた。それは主に貿易によるもので、外貨を稼ぐために輸出をせねばと国内の産業の尻を叩いたのである。その一つが紡績工業である。
また、国力と経済力をつけるためには、軍事力の増強による近代化だと、軍事拡張にかなりの無理な財政を使った。


そして、特に気を遣ったのが、英国、米国に対してであり、やがてこれは日英同盟という軍事同盟を結び、大国の力を借りることになった。

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