がん総合相談センターを開いた専門医 暖かい医療の創造を目指して(1)

連載:がん総合相談センターを開いた専門医

医事評論家 菊地一久
2003/07/10

■がん告知と患者の苦悩

医学は万能ではない。死に至る病として恐れられている「がん」も、臓器やその病巣の位置によっては早期発見が見落されることがある。 病気の軽重はあるとしても、がん告知後の患者の悩みは大きい。

確かな死生観を平生から持っている人でも、死を強く意識したとき、心は痛み、孤独と淋しさに耐え兼ねて、家族や医師にすがりつく。 病者は絶対的な弱者となり、感じやすく、脆く、頼りになるもの、確かさを求める。これは人間の本来の姿であろう。
死はたしかに一人で担わなければならない実存的な課題だが、これは大変な苦悩である。

■持てる者と持たざる者

がんという病気の事実を告げることによって、医師、患者、家族をはじめ医療関係者が、偽りのない真摯な関係を互いに努力して創っていく医療文化が、日本にはあるのだろうか、と疑問になる。

患者、家族が医療の場面では取り残されているという感じが強い。高度な医学知識と技術を持った医師と、何も持たない患者との対面は、一種独特の人間関係である。
患者は医師に反抗すれば見捨てられるという恐怖感が強く、受けている治療に疑問を持ちながら受診を続けている。
医療機関の建物が立派になり、医学技術が進歩しても、心を支える面が希薄では医療は片手落ちである。
患者は1日24時間、休むことなく病と対峙しており、その荷はかなり重い。
そして医療は財政的にきびしく、差額ベッド代など保険外負担もあり、患者に対してどうも冷たさを感じる。

■患者と話し合う医師

こんな状況の日本の医療現場において、患者のがんにまつわる話に真摯に耳を傾ける医師がいる。 38年間国立がんセンターで診断・治療・研究に従事した後、定年を機に「がん総合相談センター」を開いた、松江寛人医師だ。

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