スポーツ選手のための栄養プログラム(5) スポーツ選手の栄養管理

連載:ビタミンつれづれ

薬剤師 古田裕子
2002/11/01

1.食事管理の重要性

常によい状態で試合に臨むため、競技者にとって日頃の体調管理は非常に重要です。選手は監督、コーチ、トレーナーの下でトレーニング・メニューをこなしていきます。そのメニューに自分の意志を完全に反映させることは困難ですが、食事に関してはかなりの部分まで自己コントロールが可能です。
栄養素にはそれぞれの働きがあり、エネルギー供給、身体づくり、コンディショニングなどは食事の内容、食事のタイミングが大きく影響します。栄養素の持つ働きを理解し、自分の目的に合わせて、自分の体調に気を配りながら食事管理が行えるようになると、数多くの病気やけがなどのリスクを回避できるばかりか、効率の良いトレーニングによって確実に体力や技術の向上が図れます。

2.スポーツ選手のエネルギー所要量

スポーツ選手の栄養補給で大切なことはエネルギー代謝、身体づくりに必要なすべての栄養素の要求量を満たすことです。トレーニングの際のエネルギー消費量はトレーニングの状態、たとえば温度や湿度、負荷の大きさ、その日の体調など複雑な要因が関わって変化するとともに、個体差も存在します。
したがって、サッカー選手だから、水泳選手だからというだけで一律のエネルギー所要量を計算することは、平均的な基準にはなりますが、現実的には一人ひとりの状態に合わせてそれを調節しなければならないことを理解しなければなりません。
必要なエネルギー補給がされているかどうかをチェックするいちばん簡単な方法は体重のチェックです。体重の変化を細かくチェックし、記録することでエネルギーの供給不足は防ぐことができます。その際、体調の良し悪しも合わせてチェックすることで、エネルギー源となる以外の栄養素の不足もある程度防ぐことができます。


また、体脂肪率の測定も忘れてはいけません。これはエネルギー過剰の判断基準となるだけでなく、意図的な筋量アップや減量の際、脂肪を増やさずに筋量だけを増やし、また筋量を減らさずに脂肪だけを落とすための食事プログラム、トレーニング・プログラムが適切であるかどうかの判断基準にもなります。
体重増加を目的としてやみくもに食べることで筋肉だけでなく脂肪もついてしまい動作が鈍くなったり、減量時に脂肪ばかりか筋量までも減少してパフォーマンスが低下するデメリットに注意しなければいけません。
スポーツ選手のエネルギー所要量は以上のようなことを考慮しながら、体重、体脂肪率、体調の良し悪しを定期的にチェックし、その都度見直しを行うことが大切です。また、指導する立場にある人は個人差を考慮して、合宿時の食事メニューなどに選択できる要素を増やすといった工夫も必要です。
ただし、いちばん重要なのは選手一人ひとりが食事、栄養のもつい身を正確に理解し、必要なものをどのように摂取するかという知識を身につけ、それを実践していくことです。

3.運動時に必要な栄養素とビタミン、ミネラルとその役割

エネルギー源として使われる栄養素はたんぱく質、脂質、糖質の3大栄養素です。この栄養素はエネルギー源として利用されるほかにもいろいろな働きをしています。また、この3大栄養素を効率よく使うためにはビタミン、ミネラルが必要です。
スポーツ選手の栄養を考える時、量的な充足だけでなく、質的な向上を図ることが重要です。ここではまず、それぞれの栄養素の役割を述べてみます。

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