寄稿
ループループを使用した下肢筋力訓練法と効果

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◆ はじめに
通所施設において運動器の機能維持、向上は、大切なプログラムの一つである。しかし、専用のマシンなどは高価であり、ある程度の設置面積も必要となる。
そこで、当施設にてループループ(ループ形ゴム)を使用し(以下ループループと略)、下肢筋力増強訓練を実施した結果、利用者のADL※1の維持改善、訓練意欲向上などがみられたので報告する。
◆ 当通所リハビリテーションの紹介
定員20名。平成17年8月の平均介護度は1.9。登録利用者数47名。スタッフ数平均6人/日。車椅子での送迎者はおらず、杖、歩行器、軽介助での歩行が可能な利用者が来所している。
◆ 使用物品
- ループループ: (株)エープライム社製。
- 椅子
- ループループ固定: 針金で作成したフックを使用。



◆ 訓練方法
利用者ごとに、作業療法士が、膝関節の屈伸群の筋力をループループの本数で評価する。またその評価本数の負荷をかけ20回膝関節を連続して屈曲伸展する。その結果を踏まえ、訓練負荷本数を決定する。(利用者が20回連続で屈曲、または伸展した途中で疲れを訴えたとき、心疾患などがある場合には血圧、脈拍数などをから本数を決定する。)
決定した訓練負荷本数で、膝関節の伸展を右・左20回ずつ。左右同時を20回。屈曲を左右同時に20回実施する。(写真参照)また、麻痺のある利用者については、両足にループループを掛けて実施した。(実施スタッフは、専従者でなく、持ち回りで実施)
また、その訓練開始時期に合わせ、体操の時間を10分間から30分間へ延長、役割の実施、作業活動種目の増加、プログラム個別性などのプログラム変更を実施した。
◆ 効果
訓練を拒否した利用者以外の全員に1年間来所時に実施した。
ループループの負荷本数が向上した利用者14名、 維持20名、(ただし維持20名中最大本数4本の利用者数6名)、減少1名。
室内杖歩行から、杖なし歩行への向上者3名。
軽介助歩行から、歩行器使用、伝え歩きなどに向上した利用者が3名。
心理的効果として、負荷本数により自分の筋力の増加結果がわかるので、維持増強結果がフィードバックしやすく、向上意欲へと繋がり継続実施しやすい。(一般的な弾力性バンドは色によって張力が異なり、負荷力を上げる場合「色」の変化になる)
スタッフと3分~10分ほど1対1で実施するので、心情、身体症状変化などの訴えをスタッフが聞き取ることができ、それらに対して対応することが可能になり、よりきめの細かいリハビリテーションが可能になった。
◆ まとめ
1名を除く実施者全員の負荷本数が維持向上した。
また、専門職以外でも比較的簡単に実施でき、本数による利用者の訓練意欲向上にもつながり導入しやすく、有効的な訓練であると言えよう。